院長ご挨拶

“リラックス”して
治療を受けられるように…

さかもと歯科医院 院長 坂本晃一

実は、私が歯科医師の国家資格を取得したのは33歳のときです。というのも、高校を卒業して一度別の学部へ入学し、その後に歯学部を再受験したからです。恥ずかしながら、正直に言えばとても勤勉な学生とは言えない学生時代を過ごしました。

そんな学生生活を送ってしまった理由は、やりたいことがいろいろあり過ぎたからです。小学生のころから柔道や空手と武道を習っていて、自分の道場を開きたいという夢がありました。作家や料理家にも憧れました。最初の大学進学時には、獣医を目指していました。

こんなふうに、あれやこれやと興味の対象が尽きなかった私は、自分の興味の赴くままにいろいろなことに目を向けていたので、やりたいことを1つに絞れなかったのです。当時のことを思うと、両親には本当に迷惑をかけたと思っています。

自分の進むべき道に散々迷ってきましたが、性格的に職人気質なところがあり、資格が必要な専門的な仕事をしたいと考えて、歯学部という道にようやく落ち着きました。

そんな私ですが、大学での勉強を通じて、資格を持つ専門職の仕事はいかに責任が重く、そして大変な仕事なのかを実感しました。

でも、大学を卒業して歯科医師の資格を持ってからのほうがもっと大変でした。歯科医師の資格を取得した直後は、一般の歯科医院に勤務しました。実際に患者さんを担当しながら現場での経験を積んで、歯科治療に必要なさまざまな技術を磨いていきます。

初めて患者さんを担当したときには、大切なお身体を預かっているというプレッシャーで、麻酔も上手に打つことができませんでした。初心忘るべからずと言いますが、あの日のような緊張感で治療に取り組むことは、今も歯科医師としての大切な心構えだと思っています。

ただ、現場でいろいろな患者さんの症状を診て、さまざまな症例を経験しながら勉強して自分の経験値を増やしていくことは、本当に大きなやりがいがありました。これというものが見つかると猪突猛進するタイプなので、経験と勉強が楽しくてしかたなかったものです。

そんなとき、私にひとつの試練が訪れます。それは、ある日突然、左肩が上がらなくなってしまったのです。歯科医師の仕事は手先を使う仕事なので、たとえ利き腕ではないとしても、大きな影響が出ます。あのときの痛みは、本当に苦しかったです。

しかしながら、この経験を通じて、私はあることに気がつきます。それは、「どれだけ良い技術を持っていたとしても、身体の状態が良くなければ、その技術を発揮することはできない」ということです。

とても当たり前のことなのですが、技術を磨くことばかりに集中するのではなく、無理なく仕事ができる身体の使い方、患者さんとのコミュニケーション力、歯と口以外の全身の病気に対する見識など、歯科医師に必要なスキルはたくさんあります。

もともと口は全身の一部と考えて、全身の健康も含めたトータルヘルスケアを考えられる歯科医師を目指していましたが、当時の考えは浅はかなものでした。

でも、自分が身体を傷めるという経験をしたことによって、私の視野は大きく広がりました。そして、歯科治療に対する考え方や取り組み方も変わってきました。それは、さかもと歯科医院を開院してからの治療方針にもつながっています。

まずは、ただ歯と口という考え方をするのではなく、「身体の器官」のひとつとして歯と口を診るようになりました。口は食べ物を食べ、身体に栄養を取り込むための器官ですから、全身の健康を守る入口になります。そう考えれば、胃や腸と同じぐらい重要な器官です。

歯と口が全身の健康とかかわっていることに気づいてからは、歯科以外の分野も積極的に勉強してきました。「歯と口の健康を通して全身の健康を守ることができる」そんな歯科医師になりたいと考えて、たくさんの知識と技術を勉強してきました。

もともと職人肌な私ですから、治療に使う材料ひとつにもかなりこだわりますし、何よりもひとつひとつの治療には十分な時間をかけて、ていねいに取り組んでいます。

私にとっては何万回と行う治療の1回かもしれませんが、患者さんにとってはその1回がすべて大切な治療です。だから、どんなことがあっても手を抜くことはできません。

ただ、そんなこだわりを持って歯科治療と向き合ってきたときに、またひとつの壁にぶつかります。それは、「歯医者さんは痛くて怖い場所」と感じている患者さんが圧倒的に多いという事実に気づいたことです。

むし歯でも歯周病でも、歯と口の病気というのは、食事や歯みがきなどの生活習慣によるところが大きいものです。それゆえに、患者さんの協力を得ながら、私たちと患者さんが力を合わせて治療を行っていかなければなりません。

でも、「痛い」「怖い」という先入観があれば、積極的に歯科治療に取り組もうという気持ちになんてなれないと思います。

ですから、私は「治療をする環境」も大事だと考えるようになり、歯医者さんが苦手な方でも“リラックス”して治療を受けられる環境づくりにも力を入れるようになりました。

このようなさまざまな経験があり、そしてそのたびに私自身も気づいて学びながら、今のさかもと歯科医院のスタイルができあがってきました。

でも、まだこれで終わりだとは思っていません。これからも、患者さんが「快適な環境で最高の治療」を受けることができるように、進化し続けていきたいと思っています。